対外政策の形成

 

 

・対外政策決定と外交

 対外政策に関して、その決定過程が対外政策決定であり、政策の実施段階が外交である。前者が国内的なもので民主的統制が及ぶのに対して後者は対外的な作用であり、秘密性を要するものである。しかし両者は結びつき、もはや厳密に区別できるものではなくなっている。

 

 

国益

 国家が自己の利益を最大化する際追求すべき目標のこと。リアリズムにおいては、国家の自己保存が最も重要な利益であり、国家安全保障が第一の国益として捉えられている。

 Cf. リアリズム:国際関係はアナーキーであるため国家同士の対立が常態であり、協力は難しいとみなす考え方。

 

 

・ビリヤードモデル

 国家安全保障を第一の国益とした場合、国益は国家間の関係によって定義されるのであり、国家内部の各主体は同一の目的をもつものとして観念できる。この結果、国内的な要因を無視して国際システムを客観的に認識することで自ずと国益や国家の動きは決定されるという考え方をビリヤードモデルという。

 

 

・合理的行為者モデル

 リアリズムやビリヤードモデルの考え方において国家は対外的な要因の変化に対して常に最善の手段を選択するということが前提となっているが、その考え方を理論化したものが合理的行為者モデルとなる。(第15章を参照)

 

 

・組織過程モデル

 このモデルでは各組織が独自の対応をとることで、国としては一見合理的でないような政策決定をすることがある。(第15章を参照)

 

 

・政府内政治モデル

 対外政策決定におけるモデルの一つ。(第15章組織内政治モデルを参照)

 

 

多元主義的アプローチ

 階級や利益集団など社会集団の圧力が国家の政策選択を決定するという、政策決定過程に対するアプローチ。

 このアプローチからは社会集団の選好を特定することができれば国家の政策選択を説明できるという議論が生まれるが、実際には社会集団が政府に対して干渉するための政治的制度が関わってくるため注意が必要である。

 

 

・逆第二イメージ

 国内政治から国際関係を説明する視角(第二イメージ)に対して国際関係が国内政治に与える影響を分析する考え方。外圧について考える際有効となる。

 

 

・二層ゲーム

 政府は、国際的交渉において自国の利益を最大化するという国際的ゲーム(レベルⅠ)と国内において政策に対する支持を動員するという国内政治的ゲーム(レベルⅡ)を同時に行っているという考え方。レベルⅡで受け入れ可能な妥協の幅がレベルⅠの交渉に影響を与える一方、レベルⅠにおける戦略がレベルⅡのゲームに影響を与える。

 

 

・戦略的選択

 政策の決定は一国のみで形成されるわけではなく、他のアクターの政策に依存して行われるという考え方。このアプローチでは、相手にどのような合図を送るのか、約束した合意が履行されるのか、どのような情報がアクター間に存在するのか、などの問題が政策決定に影響を与える重大な要素とされている。

 

 

・相互浸透モデル

 政策決定において、非国家アクターが政府に働きかけるだけでなく直接的に関与する状況を捉えるモデル。相互依存が深まれば、交渉国の双方の政策決定過程に交渉相手国の非国家アクターが関与すると考えられている。

 

 

参考文献『政治学』(有斐閣) 第16章対外政策の形成