政策過程
・制約された合理性モデル(満足モデル)
合理モデル(課題の設定→選択肢の探求→結果の予測→結果の評価→選択)はあくまで理想であり実現は難しいことから、制約された合理性モデルの考え方が生まれた。特徴は
①選択肢の検討を一挙ではなく逐次的に行う
②逐次的な探求の途中で一応納得できる選択肢が発見された時点で探求を中止する。最善にはこだわらない。
③結果の評価の際の基準は制約(主に時間的制約)によって変化する。選択肢がなかなか決まらないときは要求水準が引き下げられる。
の3つ。
・公共的人間
政治家や官僚、利益団体やNPOの幹部等、意図において合理的なだけではなく事後的にも合理的な人間をさす。公共的人間は自己の下した決定についてその正当性を事後的に説明できるよう準備したうえで決定を行う。アカウンタビリティ、コンプライアンス、トランスペアランシーの観点から事後的な説明の準備が要請されている。
cf. 経済的人間:経済学などで想定される、完全な知識や予想能力等をもつ人間モデル。経済的人間は全知的な合理性を有している。
経営的人間:政治学や行政学などで想定される、制約された合理性をもつ人間モデル。経営的人間は意思決定の際、意図においては合理的だが、その過程で情報の欠如や予想能力の限界から合理性が制約されている。
・非決定権力
問題の顕在化を防ぐ力。支配者によるマインドコントロールや私的な処理によって重要な争点を隠し、都合の良い争点のみを浮上させる。
・私的な処理
問題が支配者の所まで行きつく前になされる処理。
cf. 欠陥自動車問題:欠陥自動車を購入したオーナーが、ディーラーに修理を頼んだとする。このことをメーカーに伝えると、他に欠陥自動車が存在しておりかつ同様の連絡があった場合に、欠陥自動車の存在が広く知れ渡る可能性が生じる。そのため自動車の信頼を失いたくないディーラーは、欠陥自動車を個別に修理していくことでその存在を隠すような行動をとる。
・組織による政策決定のモデル
①合理モデル:組織を人間と同様に扱って考える(課題の設定→選択肢の探求→結果の予測→結果の評価→選択)。国家安全保障に関する政策決定など、組織が集権的であり目標が一義的に定められている場合はこれになりやすい。
②組織過程モデル:複数の下位組織の連合体において、各下位組織はそれぞれ割り当てられた任務を独自に、定められた手順に従い遂行する。この結果として組織の決定が行われる。
③組織内政治モデル:組織内の役職者がその任務を最大限に実行するために、影響力を行使しあうモデル。その駆け引きの結果として組織の決定がなされる。組織過程モデルと異なり、組織内の構成単位は、他の構成単位の行動に応じながら動く。
④ゴミ缶モデル:政策決定が雑に行われているモデル。例として、理由なく決定した政策に対して後付けで必要性を考えるなど、政策と課題の逆転があげられる。組織化された無秩序(政策決定の参加者は自身の選好について確信を得ているわけではない、参加者の知識や情報不足、参加者のテンションは日ごとに違うしそもそも参加者自体が異なる場合もある)が前提となる。
・実施のギャップ
政策決定の後、実行の段階で目的の達成がなされないという問題。
①政治的な失敗:合意が得られないまま意思決定がなされたために不満な者の妨害が入る。
②技術的な失敗;政策そのものに問題があり目的が達成されない。